[レッスン]:楽しいロングトーン
今回は基礎トレーニングのロングトーン練習を真剣に考えていきましょう。
私が学生の頃は部活の先輩に毎日朝練で30分、午後の部活動時間に1時間、
メトロノームのおもりを一番上の遅い所にされ、8拍吹いて2拍休符。
ツバ抜き以外は腕がつらくなってきても手を降ろしてはいけない過酷な練習でした。
1番ついたのは、根性…‥。
1日に8時間ぐらい練習時間があればコレもありかと思いますが、ほとんどの人がそうもいきません。
毎日1時間ではなく、調子の悪い時、例えば期末テストの後とか旅行の後とかしばらく練習出来なかった後にやると、いつもよリりハビリ期間が短くて済みます。遅くても3日間ぐらいで元通り。
ボーッとやるとつまんないこの練習。
面倒くさいですよね。
でも、たとえ1時間やり続けたとしても楽しく過ごせる方法があるんです。
これからあげる15の項目には、曲を上手に演奏するヒントもたくさんあります。
ロングトーン練習を突き詰めていくと、音色だけでなく曲の演奏レベルも上がっちゃうんです。
みんな大好き!「一石二鳥」。
では、ひとつずつ説明していきますね。
楽しいロングトーン
1)テンポは♩=60。
2)始めのうちは「8拍吹いて4拍休符」のサイクルで。
実は、この休符の4拍の間の過ごし方がとても大事なんです。
1,2拍目は残っている息を吐いて、3拍目でたっぷり吸って4拍目で吹く準備をします。
「1・2・吸って・準備」です。
使う「呼吸法」や、「吹く準備」に関しては別項で詳しく説明します。
ゆっくりのテンポではゆっくり吸うのが基本です。ブレスの段階から曲のテンポのノリを掴む為です。
しかし、もちろん曲中のフレーズ間にある短い休符ではゆっくり吸えません。
その対策として、馴れてきたら1,2,3拍の間の中で吐いて4拍目の前半で吸って後半で準備、にします。
「1・2・3・吸って準備」です。
また、上級者は是非「16拍吹いて4拍休符」のサイクルにしましょう。
3)スタートは必ずMiddleのチューニングB♭(実音)から。
よくLow B♭から始める人がいますが、これはあまりお勧めしません。
なぜなら、出始めの音で基準の口の形ができてしまうからです。
トランペットのよく使う音域は運指のあるLow B♭の下のE(もちろんその下も出ますが)からHigh F(もちろんもっと上も出ますが)のだいたい3オクターブです。
この音域のだいだい真ん中がチューニングB♭なんです。
チューニングB♭からHigh B♭まではたった1オクターブです。手を伸ばせば届きそうな距離です。
でも、もしLow B♭から見たら2オクターブ上は遠く離れた雲の上の存在になってしまいます。
だから基準のアンブシュア(アンブシュアに関しては別項で詳しく)は常にチューニングB♭であるべきです。
ロングトーンに限らず、タンギングもリップスラーといった基礎トレーニングはどれもチューニングB♭から始めるべきです。

さあ、ここからは実際吹きながら読みましょうか。
4)半音ずつ下がってLow Eまでいき、チューニングB♭まで上がる。この繰り返し。
楽に吹けるようなら少しずつ音域を拡げていき、最終目標は上がHigh B♭ぐらいまで。
大事なのは楽に吹ける音域内でやること。多少の無理は必要ですが、つら過ぎて口を締められなくなってよだれ拭きながらだと、アンブシュアをこわしてしまいます。
5)はじめのうちはmpで。馴れてきたら後半fで。
必ず楽に吹くこと。mpを楽に吹くコツは別項「メゾピアノのススメ」で。
fも楽に吹ける範囲で。
終わった後、口の周りの筋肉が疲れるのは良いですが、押し付けたマウスピースの位置が痛いのはアンブシュアが間違っている証拠です。
6)吹き始め(厳密には音が出る少し前)から吹き終わりまで(厳密には吹き終わってもしばらくは)口の周りの筋肉はしっかりキープ。
この支えの筋肉は、唇の裏やほっぺの裏側が歯や歯茎に密着しているとキープしやすいです。
7)出だしにタンギングをして舌先が付き終わって戻った場所はリラックスして動かさない。
ロングトーンと言っても、実際はこの舌の位置がとても重要です。
音色はこのタンギングで8割方決まってしまいます。
8)みぞおちあたりをぎゅっと内側に締めて、息のスピードと圧力を一定にすること。
このトレーニングは呼吸法の項で詳しく説明します。
9)この「口の周りの筋肉」「舌の位置」「息のスピードと圧力」をキープすることによって音程をまっすぐに吹けるようになります。
音程は耳でガイド音を聴いて合わせるのが望ましいですが(チューニングのコツは別項で)、確認のためチューナーを使うと良いです。
チューナーはベルに付けられるクリップ式(トランペット・トロンボーンの場合)が良いです。これは目線が前のまま使えるので。目線も大事です。
よくチューナーを下に置いて変な格好で使っている人を見かけますが、あれは危険です。その姿勢で合わせても実際にはほとんど使えません。
楽器の角度が狂ってしまうからです。
10)楽器の角度も大事です。
立っても座ってもよいですが、角度は音程の高さに影響しますので、音によって正確な角度で吹くこと。「角度」は後ほど詳しく。
11)音程が合わなかった音はすばやく調整し、次に出てきた時には必ずジャストの音程を頭から出せるように、よく口の形をイメージして挑むこと。
出たとこ勝負はダメです。同じ間違いを繰り返さないこと。アパチュアのコントロールをすること。「アパチュア」に関しては別項で。
12)必ず左手で持つこと。
右手で持ってしまうと指まわりに悪影響を及ぼします。指を速く動かせなくなります。
右利きの人は左腕だけで持つのはつらいですが、重くてもきれいなフォームで持つこと。「フォーム」に関しては別項で。
13)半音の間隔の感覚を感じながら吹くこと。
現在の基本的な音楽の最小音幅は半音です。チューナーなどで言うところの100セントです。
この幅の積み重ねがフレーズを作ります。
楽器の演奏に絶対音感はさほど必要ないですが、相対音感は必須です。
半音の間隔は是非とも練習回数、時間をかけてマスターして下さい。
14)ピストンを多く押す音は抵抗が多くなり鳴りにくいので、その分しっかり吹いて、ピストンをあまり押さない音と音色を合わせる。
特に3番ピストンを押す音は、自分の音色をよく聴きましょう。2・3番を押すF♯や1・ 2・3番を押すBが苦手な人、この抵抗感を克服して下さい。
15) ロングトーンでリズム練習。
慣れてきたら、メトロノームを裏拍として聴きましょう。頭拍は自分の頭の中で鳴らします。
そうすることによって、リズムを自分で生み出すチカラが身に付きます。
メトロノームにおんぶにだっこではなく、メトロノームとデュエットする感じです。
2)で書いたブレスも大事なリズム練習のひとつです。
ブレスの時点からリズムをとらえましょう。
これはヴォーカリストでもパーカッショニストでも、もっと言えば指揮者でも同じです。
以上です。
さあ、このすべての注意事項のすべてをよく考えながらロングトーンの練習をしてみて下さい。
できない項目があると、とても悔しくなるはずです。
悔しいと思うと、次の音ではなんとかしてやろうと欲が出ます。
まず、できていないことを知ること。
そして、悔しがること。
最後に、克服すること。
この意識の繰り返しによって単調なトレーニングが劇的に楽しくなります。
ひとつひとつクリアしていけば、必ず楽器を吹くことが楽になっていきます。
楽になれば吹くことがもっと楽しくなっていきます。
たったロングトーンの練習ひとつをとっても目的と知識があればとても楽しい時間になります。
調子を戻したい時やしばらく吹けなかった後は1時間、修行だと思ってやってみましょう。
30分ぐらいまではつらいですが、40分を過ぎる頃には楽になってきます。
ランナーズ・ハイみたいなもんです。
1音1音反省し考えながら吹いていけば、1時間経つ頃には「もうちょっとやりたいかも」と思えるようになってくることも。
金管奏者にとってロングトーン練習は良いリードとリガチャーを作る作業でもあるのです。
木管と違って、リードである唇とリガチャーである口の周りの筋肉は残念ながら楽器屋で売っていません。
「ハーセスの唇」2万円、とか「ウイントンの下唇下制筋」3万、「口輪筋」とセットで今なら5万円、とかはないです。
あったら迷わず買いますが。
お金で解決出来ない分、じっくり手作りしましょう。
もうひとつ。できることを毎日何年も繰り返しやるのは時間の無駄です。
勘違いしている人が多いですが、ロングトーンはウォームアップではありません。
安定した音色や音程が出せるようになったら、必要な時だけやるようにしましょう。
他にもやることは沢山ありますからね。
でも、まずは3日間続けてみて下さい。
そしてロングトーン練習にじっくり向き合って下さい。
では、楽しみましょう!
YUHKI
私が学生の頃は部活の先輩に毎日朝練で30分、午後の部活動時間に1時間、
メトロノームのおもりを一番上の遅い所にされ、8拍吹いて2拍休符。
ツバ抜き以外は腕がつらくなってきても手を降ろしてはいけない過酷な練習でした。
1番ついたのは、根性…‥。
1日に8時間ぐらい練習時間があればコレもありかと思いますが、ほとんどの人がそうもいきません。
毎日1時間ではなく、調子の悪い時、例えば期末テストの後とか旅行の後とかしばらく練習出来なかった後にやると、いつもよリりハビリ期間が短くて済みます。遅くても3日間ぐらいで元通り。
ボーッとやるとつまんないこの練習。
面倒くさいですよね。
でも、たとえ1時間やり続けたとしても楽しく過ごせる方法があるんです。
これからあげる15の項目には、曲を上手に演奏するヒントもたくさんあります。
ロングトーン練習を突き詰めていくと、音色だけでなく曲の演奏レベルも上がっちゃうんです。
みんな大好き!「一石二鳥」。
では、ひとつずつ説明していきますね。
楽しいロングトーン
1)テンポは♩=60。
2)始めのうちは「8拍吹いて4拍休符」のサイクルで。
実は、この休符の4拍の間の過ごし方がとても大事なんです。
1,2拍目は残っている息を吐いて、3拍目でたっぷり吸って4拍目で吹く準備をします。
「1・2・吸って・準備」です。
使う「呼吸法」や、「吹く準備」に関しては別項で詳しく説明します。
ゆっくりのテンポではゆっくり吸うのが基本です。ブレスの段階から曲のテンポのノリを掴む為です。
しかし、もちろん曲中のフレーズ間にある短い休符ではゆっくり吸えません。
その対策として、馴れてきたら1,2,3拍の間の中で吐いて4拍目の前半で吸って後半で準備、にします。
「1・2・3・吸って準備」です。
また、上級者は是非「16拍吹いて4拍休符」のサイクルにしましょう。
3)スタートは必ずMiddleのチューニングB♭(実音)から。
よくLow B♭から始める人がいますが、これはあまりお勧めしません。
なぜなら、出始めの音で基準の口の形ができてしまうからです。
トランペットのよく使う音域は運指のあるLow B♭の下のE(もちろんその下も出ますが)からHigh F(もちろんもっと上も出ますが)のだいたい3オクターブです。
この音域のだいだい真ん中がチューニングB♭なんです。
チューニングB♭からHigh B♭まではたった1オクターブです。手を伸ばせば届きそうな距離です。
でも、もしLow B♭から見たら2オクターブ上は遠く離れた雲の上の存在になってしまいます。
だから基準のアンブシュア(アンブシュアに関しては別項で詳しく)は常にチューニングB♭であるべきです。
ロングトーンに限らず、タンギングもリップスラーといった基礎トレーニングはどれもチューニングB♭から始めるべきです。

さあ、ここからは実際吹きながら読みましょうか。
4)半音ずつ下がってLow Eまでいき、チューニングB♭まで上がる。この繰り返し。
楽に吹けるようなら少しずつ音域を拡げていき、最終目標は上がHigh B♭ぐらいまで。
大事なのは楽に吹ける音域内でやること。多少の無理は必要ですが、つら過ぎて口を締められなくなってよだれ拭きながらだと、アンブシュアをこわしてしまいます。
5)はじめのうちはmpで。馴れてきたら後半fで。
必ず楽に吹くこと。mpを楽に吹くコツは別項「メゾピアノのススメ」で。
fも楽に吹ける範囲で。
終わった後、口の周りの筋肉が疲れるのは良いですが、押し付けたマウスピースの位置が痛いのはアンブシュアが間違っている証拠です。
6)吹き始め(厳密には音が出る少し前)から吹き終わりまで(厳密には吹き終わってもしばらくは)口の周りの筋肉はしっかりキープ。
この支えの筋肉は、唇の裏やほっぺの裏側が歯や歯茎に密着しているとキープしやすいです。
7)出だしにタンギングをして舌先が付き終わって戻った場所はリラックスして動かさない。
ロングトーンと言っても、実際はこの舌の位置がとても重要です。
音色はこのタンギングで8割方決まってしまいます。
8)みぞおちあたりをぎゅっと内側に締めて、息のスピードと圧力を一定にすること。
このトレーニングは呼吸法の項で詳しく説明します。
9)この「口の周りの筋肉」「舌の位置」「息のスピードと圧力」をキープすることによって音程をまっすぐに吹けるようになります。
音程は耳でガイド音を聴いて合わせるのが望ましいですが(チューニングのコツは別項で)、確認のためチューナーを使うと良いです。
チューナーはベルに付けられるクリップ式(トランペット・トロンボーンの場合)が良いです。これは目線が前のまま使えるので。目線も大事です。
よくチューナーを下に置いて変な格好で使っている人を見かけますが、あれは危険です。その姿勢で合わせても実際にはほとんど使えません。
楽器の角度が狂ってしまうからです。
10)楽器の角度も大事です。
立っても座ってもよいですが、角度は音程の高さに影響しますので、音によって正確な角度で吹くこと。「角度」は後ほど詳しく。
11)音程が合わなかった音はすばやく調整し、次に出てきた時には必ずジャストの音程を頭から出せるように、よく口の形をイメージして挑むこと。
出たとこ勝負はダメです。同じ間違いを繰り返さないこと。アパチュアのコントロールをすること。「アパチュア」に関しては別項で。
12)必ず左手で持つこと。
右手で持ってしまうと指まわりに悪影響を及ぼします。指を速く動かせなくなります。
右利きの人は左腕だけで持つのはつらいですが、重くてもきれいなフォームで持つこと。「フォーム」に関しては別項で。
13)半音の間隔の感覚を感じながら吹くこと。
現在の基本的な音楽の最小音幅は半音です。チューナーなどで言うところの100セントです。
この幅の積み重ねがフレーズを作ります。
楽器の演奏に絶対音感はさほど必要ないですが、相対音感は必須です。
半音の間隔は是非とも練習回数、時間をかけてマスターして下さい。
14)ピストンを多く押す音は抵抗が多くなり鳴りにくいので、その分しっかり吹いて、ピストンをあまり押さない音と音色を合わせる。
特に3番ピストンを押す音は、自分の音色をよく聴きましょう。2・3番を押すF♯や1・ 2・3番を押すBが苦手な人、この抵抗感を克服して下さい。
15) ロングトーンでリズム練習。
慣れてきたら、メトロノームを裏拍として聴きましょう。頭拍は自分の頭の中で鳴らします。
そうすることによって、リズムを自分で生み出すチカラが身に付きます。
メトロノームにおんぶにだっこではなく、メトロノームとデュエットする感じです。
2)で書いたブレスも大事なリズム練習のひとつです。
ブレスの時点からリズムをとらえましょう。
これはヴォーカリストでもパーカッショニストでも、もっと言えば指揮者でも同じです。
以上です。
さあ、このすべての注意事項のすべてをよく考えながらロングトーンの練習をしてみて下さい。
できない項目があると、とても悔しくなるはずです。
悔しいと思うと、次の音ではなんとかしてやろうと欲が出ます。
まず、できていないことを知ること。
そして、悔しがること。
最後に、克服すること。
この意識の繰り返しによって単調なトレーニングが劇的に楽しくなります。
ひとつひとつクリアしていけば、必ず楽器を吹くことが楽になっていきます。
楽になれば吹くことがもっと楽しくなっていきます。
たったロングトーンの練習ひとつをとっても目的と知識があればとても楽しい時間になります。
調子を戻したい時やしばらく吹けなかった後は1時間、修行だと思ってやってみましょう。
30分ぐらいまではつらいですが、40分を過ぎる頃には楽になってきます。
ランナーズ・ハイみたいなもんです。
1音1音反省し考えながら吹いていけば、1時間経つ頃には「もうちょっとやりたいかも」と思えるようになってくることも。
金管奏者にとってロングトーン練習は良いリードとリガチャーを作る作業でもあるのです。
木管と違って、リードである唇とリガチャーである口の周りの筋肉は残念ながら楽器屋で売っていません。
「ハーセスの唇」2万円、とか「ウイントンの下唇下制筋」3万、「口輪筋」とセットで今なら5万円、とかはないです。
あったら迷わず買いますが。
お金で解決出来ない分、じっくり手作りしましょう。
もうひとつ。できることを毎日何年も繰り返しやるのは時間の無駄です。
勘違いしている人が多いですが、ロングトーンはウォームアップではありません。
安定した音色や音程が出せるようになったら、必要な時だけやるようにしましょう。
他にもやることは沢山ありますからね。
でも、まずは3日間続けてみて下さい。
そしてロングトーン練習にじっくり向き合って下さい。
では、楽しみましょう!
YUHKI
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ぼーっとしながらメトロノームに合わせて
ロングトーンしてましたよ…(ToT)
損した…m(_ _)m